Prologue

16/16
前へ
/434ページ
次へ
 ──言った! 言ってやった!  今までは美人も可愛子ちゃんもどんな契約も手にして来たんだろうけど、世の中には手に入らないものだって有るってことをきちんと教えてあげないと。  ──奪った! 奪われる前に奪ってやった!  キスっていってもほっぺになんだけど、何処とは指定されなかったもんね。  にしたって、たまたま居合わせた私に、よくもまぁ次から次へと口説き文句が出てきたこと。社内一抱かれたい男とかいって、ただの尻軽男だったとは実に残念だ。 「ああでも来週からウチの部長かぁ……」  モテオトコのプライドをズタボロにしたんだもの。明日早々クビちょんなんてことも……ううん、部長とてできないはず。なんてったって私には社長という大いなる後ろ盾が付いているのだから。  普段は鬱陶しいくらいなのに、都合の良い時だけ社長ブランドを纏おうだなんて私も大概世の中ナメている。  でも今回ばかりは助かった。 「真山野獣なんて怖くない!」  この日この時、私は確固たる正義感に満ち溢れていた。  だけど明日早々にも後悔する──今宵、自分がとんでもない勘違いをしていたことに。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23004人が本棚に入れています
本棚に追加