Prologue

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 今月も営業成績ぶっち切りのトップ、聞いた所生まれながらのサラブレッドらしい。おまけに我が社きっての色メンときたもんだ。  ──はあ何をしても許されちゃうよなぁこれは。  などとつくづく感心している場合ではない。ことは最悪の事態にまで発展していた。  〝いよいよ〟を仄めかされ、ゴクリ喉が鳴る。  だってこんなことになるなんて思いもしなかったから。あり得ないほどバクバクしてる心臓が飛び出ないよう手で押さえる。でも一先ず落ち着こう、と、相撲取りのように両手を前に出してみた。 「(……)」  ──まあ実際虚しいだけなんだけど。  一人相撲しているうちにも一番の脅威であった足が遠のき、音という音が途絶える。私的には束の間の休息が訪れたわけだ。 「あれれ? 真山さん?」 「……なーんて、な。俺が誰にでも盛る男だと思った? 誰が抱くかよ馬鹿馬鹿しい」  ただこれには私も目が点になった、今の流れ的に有り得ない展開が訪れたのだから。  あれだけ喰いますオーラ出しておきながら寸前で手のひらを返したのだ、据え膳食ってなんぼの野獣ともあろうものが。
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