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「な、によいきなりその気にさせといて!」
──だよね、私も期待しちゃったもん。
「諦め悪そうなオンナだから少し相手してやっただけ。俺が誰でも抱くとでも?」
冷めた声で「めんどくせ」と追い打ちを掛ける真山野獣。
──鬼畜すぎでしょう。
まあでも、こうきたなら後の展開は目に見えている。
エンドロールの間に席を立つ客のように、バッグの取っ手を肩に掛ける。臨場感溢れるラブシーンからの修羅場ゴチになりました、と顔の前で手を合わせてから。
ムカつき冷めやらぬ彼女はまだ声を張り上げているけれど。
「ちょ、馬鹿にしないでくれる!? 大体アンタみたいなオトコがいつまでもフリーだからみんな期待するの、さっさと女作ってよ!」
はいここで一発平手打ち。
オンナのプライドをズタボロにしたのだから仕方のないこと。慎んで受け止めるべし。
ところが野獣って人種は怯まない……どころか開き直っていらっしゃる。
通路に転がった事務椅子に踏ん反り返り、長い脚を見せつけるかの如く大袈裟に足を組もうとしていた。
となると、待って、私の顔面目掛けて革靴が飛んで来るわけで。
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