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「(え……うそ、うそ勘弁してよっ)」
「大きなお世話。俺の劣情を満たせるオンナがひょっこり出て来るよう精々祈っと──、け!?」
「ひいっ!」
防衛本能と反射神経が働き、黒光りしているそれをうっかり両手挟みしていた。それだけじゃない、ついに声を上げてしまったのだ。
──マズい、私的にこれは非常おーにマズい。
ハッとしてブツを放したが時は遅し。足の先に異変を感じた真山さんに、ついに、私のサンクチュアリであったデスクの穴を覗かれるのであった。
──このような場所から失礼します……。
「お、お疲れさまですっ?」
「……そんなとこでなにやってんの桐谷さん」
──ごもっとも、です。
夜間デスクの穴にすっぽり収まり、小さく体育座りをしてるひとが居れば誰でも不思議に思う。むしろ怖い。
というのも、置き忘れたスマホを取りに戻った矢先、真山さんが現れたので咄嗟にデスクの下に隠れたのだ。
夜のオフィスは人気もなく薄暗い、絶好の狩り場。彼が苦手というより、それこそ私が喰べられるかもと危険を察知して。
よくよく考えたら、私を喰いものにするオトコなんてこの社には居ないのだけど。
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