野獣の品格

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 それも間を経て、重々しい眼差しに変わる。 「言っておくけど、お前が見た本当の俺はほんの一部でしかないよ」 「そう、なんだと思います」 「さっきは少し急ぎすぎたよ。本気にしなくていいから」 「本気にさせたのは真山さんじゃないですか。こんな中途半端な気持ちのまま来週からバディなんてやっていけないですっ」  多分これは衝動的なもの。  この恋に飛び込むも見切りをつけるも、私次第なら──アリかも知れない抱かれてみるのも。  そうはいってもグラスに掛けた指の震えが止まらない。グラスが鳴らないように爪を立てずにいるのがやっと。こんな思い切ったことは生まれてはじめてで。  それを知ってのことか、貴方は「ああもう」とでも言いたげに前髪をぐしゃっと一揉みした。 「コタロー、チェックして」  自分からふっかけておきながら時間短縮発言で萎縮する。  〝口説かれてドキドキしたら、恋〟  〝キスを拒否できなかったら、恋〟  〝抱かれたいと思えたら、恋〟  〝もう少し一緒にいたい〟と思えたら、それはもう恋──。
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