踏むなキケン猛獣スイッチ

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 そういう大事なことはもっと早く言って欲しかったよ。  勢い任せで此処まで来たが、今ので一気に現実に呑み込まれた。25歳でおばさんとはこれいかに。  私は〝桐谷〟とは血が繋がってないので、叔母と甥でも法に抵触することはない。とはいえ、これは血とか法とかの問題なんでしょうか。  スコッチでつけた加速に急ブレーキがかかる。エントランスへと進みゆく足とは反対に後ずさりしていた、けれど。 「俺のタガを外しておいて逃げれると思うなよ」  手を捕まえられたわけではない、ガッチリ肩を抱かれたわけでも。オンでもオフでもない尖った眼差しが、帰さないっていう。  満月に照らされて浮き上がる獣のオッドアイ。目が合えば最後、見えない鎖に繋がれる。  今更正気になんて戻させてくれない。磁石に吸い上げられるようにその背中に付いて行ってしまう。  真山さんが押したエレベーターのボタン階は一番上、つまり最上階。億ションが決定した瞬間だった。  マンション価格は階数が高いほど高額になる。そしてこのマンションシリーズ上層階は例外なく2LDKからの間取り。  オンナを連れ込むくらいだから当然一人暮らしなんだろうけど。だだ広い部屋に一人で住んでいるとは、なんて贅沢な。
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