踏むなキケン猛獣スイッチ

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 今宵は雪でも降るんじゃないか、というくらい寒くて、一層人肌恋しくなる冬夜だった。 「またお待ちしています」  BAR─Cherish─を後にし、真山さんが停めたタクシーに乗り込む。会話などない、胸がドキドキ煩いだけで。  車を走らせている間も自分のしたことに驚きを隠せないでいた。  初めてまともに話した翌日彼女になった、その翌晩カラダの関係を持つ。日刻みで進展していくスピードに、ほんとうは付いていけてない。大胆不敵な真山さんに触発されたんだろうか。  今確実に言えることはただ一つ。真山さんにぶち破ってもらわなければ、私はずっと恋愛チキンの殻に閉じ込められたままだということ。 「ここでいいよ、停めて」 「はい畏まりました」  タクシーが停まった場所は、やかましい都会のネオンからそう遠くない麻布十番の地。都内の中でも物価や地価が高く、かなりの稼ぎがないと住めないセレブの街。  目の前にそびえ建った、30階はくだらないタワーマンションを見上げてゴクリ唾を飲む。 「ところで真山さん何者なんですか?」 「ん?」
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