14章 闇の主の粋な計らい

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・ 何も期待していなかった── だが、新しくこの地にやってきた領主はモーリスが全てを託した男だった……。 「あ、明日から何をすればいいんだっ!」 一人が瞳を輝かせながらグレイに大きな声で尋ねた。興奮気味の口調に他の民達も乗せられて口々に騒ぎ始める。 「なんだったら今からでもやらせてくれっ!」 「ああ、そうだっ! どうせ寝るだけだっ、それならほんの少しでも作業をしてたほうがいいってもんだ!」 勢い付いて止まらない。なるだけ早くこの土地を元に戻したい── そういった民の気持ちが早く早くと心を急かす。 グレイはその騒ぎを治めるように手の平を軽く見せる。 口を開き掛けたグレイの様子に民達は直ぐに口を接ぐんだ。 「先ずは塵を全て取り除くことだ──…それから土を入れ換える。食物から出る塵は肥料となるよう取って置くように──…」 「入れ換えるって…、新しい土はどうやって調達されるんで…」 不安になり一人の民がグレイに尋ねる。グレイはその質問にニヤリと笑みを返した。 「気にするな──…そのくらい、国王に“準備させればいい”──…」 グレイは企みを含んだ笑みを浮かべる。そして民達はその言葉に戸惑いながらもただ頷くしかなかった…。
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