14章 闇の主の粋な計らい

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・ 魔物とはこういうものなのだろうか── 気まぐれに命を助け力を能え、それを今度はどうするつもりでいるのか… モーリスは自分の手を胸に当て、心臓の上に置く。 当たり前だが鼓動など打ちはしない── だが、手に透ける血の道は生き生きと脈を打っている。 これが魔物としての命だ── モーリスはそう実感しながら目を附せていた……。 ロマネ再建の為に民達は尽力を奮い、新しい領主のグレイが言った通り、国からは農機具や肥料、土が届けられる。 それから二ヶ月後── 「……こっ──…今度はなんだっ!?…」 明け方前の寝室で、恐怖に震える声を上げながら一人の男が腰を抜かしてベッドから落ちて上を見上げた。 眠りに付いていた顔に影が掛かり、物の気配に目を覚ました王は、宙に浮かんだ状態で自分を覗き込んでいた闇の主の姿に脅えながら床を這う。 「お、お前の要望どうり援助は続けているだろうっ…他に何が欲しいんだっ」 グレイは脂汗を吹き出させる王を眺め、フッと笑うとふわりと床に降り立った。
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