14章 闇の主の粋な計らい

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・ 満面の笑みで町の皆と集合写真を撮る。 父親として隣に並べないことはとても悲しい── だが、娘の幸せそうな顔を見ることができた。 ほんとうならばあの日── 娘は殺されていた筈だったのだ。 それをこの主は救った── 人間に襲われた民を魔物が救い、そして守り、活かした…… 土地、財産、持っている全ての物と朽ち掛けていた命とを引き換えに、この魔物の主は娘を何気に大事に育ててくれた…… 式に顔を出さなかったグレイはモーリスと共に華やかな人間の結婚式を離れた位置から見守る。 小さな田舎町の小高い丘に立つ教会の鐘は祝福の穏やかな音色を町の空に響かせる。 モーリスはその場所から今年も豊作を迎えた葡萄畑を遠くに眺めた── 式を終え、花婿と共に屋根のない白い馬車に乗り込んだイザベラは町の皆の祝福を浴びながら街路を巡る。 その姿を見送ると燕尾服を来たフィンデルは涙の滲む目尻を拭いゆっくりと背を向けた。 「………」 モーリスは静かにその後を着いていく。
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