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フィンデルが向かったのは教会裏の墓地だった──
その中で一番立派な墓の前に佇むと大事そうに手に抱えた木箱からフィンデルは一本のワインを取り出していた。
「モーリス様…約束の乾杯だ……」
手にしていたグラスを二個、目の前に置くとフィンデルは語り掛けるようにしてワインを掲げた。
まるで生きているモーリスを相手にしているように墓に向かって笑みを浮かべる。
ワインのラベルにはイザベラの名前と瓶詰めされた日付が記されていた──
イザベラが生まれてから丁度、ニ十年……
ゆっくりと時を掛けたワインは最高の味に熟成されている。
あの日、イザベラの誕生日に搾ったワインを祝いにモーリスに持っていき、産まれたばかりの小さなイザベラを抱き上げるモーリスにイザベラが二十歳になったら一緒に飲もう──
そう共に誓った祝杯の約束をフィンデルは口にする。
コルクの栓を抜くと小気味の良い音がポンと鳴り、フィンデルはコルクに染みたその香りを深く吸い込んだ。
「最高の味がしそうだ…こりゃあきっと舌が唸りますよモーリス様もっ…」
フィンデルは言いながらワインをグラスにとぷとぷと注ぐ──
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