14章 闇の主の粋な計らい

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・ まろやかなのは一目瞭然。滑らかな赤いワインがゆっくりと中でワルツを舞うようにグラスに沿って踊っている。 フィンデルは回したグラスに鼻を近付けてまた、その芳醇な香りを堪能すると口に含んだ。 「──…」 目を閉じてその深い味わいを記憶する。 今日も今朝採れた葡萄を結婚式の記念にと詰めて保存した── また、それを二十年後にここでモーリス様と味わおう── モーリスはフィンデルのその姿をじっと見つめ涙を滲ませる。 皆心優しき民達ばかりだ── こんなに大事なもの達を守ってくれた…… モーリスは闇の主人にただひたすらに感謝して目を附せた。 そのモーリスの背後でふっと何かの気配がする。 「あのワインをフィンデルから貰ってる──…帰ったら直ぐに味わえるよう準備しておけ──…グラスは二つだ」 「───」 モーリスは目を見開く。 そして微かに目を細めると「畏まりました…」そう返事をして笑みを浮かべた……。
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