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焼けて黒く焦げたレンガが道のあちらこちらの隅に一纏めにして置かれている──
火を放たれた町は民の手で少しずつ修復作業を進められていた。
白い壁が煤(すす)で汚れている──
葡萄畑の近くにある教会では火事で亡くなった民達の慰霊の儀式が行われていた。
あの日から一週間──
葡萄畑には賊達の撒いたゴミが散乱している。その手入れも出来ぬまま、家を失った物も多く、教会で皆が肩を寄せ合い生活を共にしていた。
慰霊の儀式を済ませた民達は合同墓地へ足を向ける。沢山の墓石の中、皆はその中で一際大きな墓石の前に立ち並んだ。
そこにはこの、ロマネの地の繁栄に尽くしてきた一家の末裔──
モーリスの名前が記されている。
「結局遺体は見つからず終いだったな……」
「ああ……」
フィンデルの呟きに民は口を悔しげに結んでいた。
「……俺はっ──…悔しくてしょうがねえっ……」
一人の民は堪えきれず吐き出すように叫ぶと声を震わせ溢れる涙を拭う。
「悔しいのはみんな同じだっ!……モーリス様だってっ…」
「……泣いてる場合じゃねえんだっ……でも今は泣かせてくれっ……」
民達は抑えきれず次々にすすり泣き、声を漏らす。
自らを叱責しながらも今だけは溢れる涙を止めようとするものは一人も居なかった。
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