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「おい、新しい領地主が来てるらしいぞ」
「新しい?」
塵をリヤカーで収集場まで棄てに行き、戻ってきた民が口にした。
何も聞かされていなかった民達は畑の塵を拾う手を休め、腰を上げる。
「畑がもうこんなだ…今さら何もないこの町に来るなんて物好きな奴も居たもんだな……」
一人の民の呟きに皆が頷くと、休めていた手をまた動かし始める。
こんなだ──
そう思いながらも畑を元の姿にしようと無心に作業する。
言葉とは裏腹にやはり捨てられないものがここにはある──
だが、薬品まで撒かれてしまった畑の土を最初からまた作り直すには一苦労だ。
おまけにその土作りに必要な改良書はモーリスが居ない今、何処にあるのかもわからぬままだった──
「今日の夕方に新しい領地主の挨拶があるらしい。民は皆、公会堂に集まるようにだと」
知らせを聞いてまた作業していた手を止める。
「どんな金持ちが領地主になったか知らねえが、この畑の土はモーリス様じゃなけりゃあ生き返らせねえ……」
「ああ、誰が来たって同じだ…」
互いに相槌を付き合いながらまた、無心に塵を拾い始めていた。
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