14章 闇の主の粋な計らい

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・ 家屋全焼の者、半焼の者、焼けた範囲が広いために民の殆どが家無しの状態だ。 公会堂も教会と同様、避難をする民が溢れる中、町中の民が公会堂の外に集まり待機している。 皆が興味深げに見守る中、演説台に立った一人の青年に民は目を見張った。 漆黒の髪、そして真正面から射す赤い夕焼けに透き通るような白い肌が染まっている── 黒い筈の瞳はそれを映し込み、赤と黒の染色を交互に見せていた。 「若いな……」 「ああ、あれで領地主が務まるのか?」 「とうとう、ロマネも神に見放されたか──…」 そう呟いた民に演説台に乗った青年はチラリと視線を流しその瞳を附せてふっと笑う。 神に見放された──…か… その通りだ… この地は神に見放されたどころか闇の主に魅入られたのだから── 民に顔を向けた青年の表情に息を微かにのむ音があちらこちらから聞こえてくる。 青年は口をゆっくりと開いた。 「私の名はグレイ・クロスフォード──…このロマネの地を親愛なる亡き友から受け継ぎ今日からこの地の主とし、民の皆と共に町の再建を──…」 「……亡き友!?」 フィンデルが紹介の途中でそう大きく声にした。
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