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受付が空いていたので訊いてみると達成回数の共有は可能らしい。ギルドカードに記載してもらえるそうだ。魔法的な手段かと思い質問してみると、それ専用のインクで手書きするとのこと。やはり専用の消す薬剤があるそうだ。意外と手作業だった。 「ポン! そろそろ行くわよ!」 ああ、呼ばれているな。掲示板に飽きたか。 私は片手を上げて応じると受付に礼を言い冒険者ギルドを後にした。 馬車まで戻るとフロッサが御者台に居らず、馬車の中でエイラたちと一緒に座っているようだ。 そういえば魔法を教わりたいと言っていたな。時間が短いので魔力の扱い方を教わる程度か。 「やっと帰ってきた……。お腹空いてきたので急ぎます」 アリシアの口調が素に戻るくらいに待ちくたびれているようだ。これは申し訳ない。いや、私は便乗して用事を済ませただけだから別に良くないだろうか。 さっさと御者台に乗り込み首を傾げる私を余所に、馬車はゆっくりと走行を再開した。 お昼時に近くなってきたせいか人通りが増えてきたように感じる。とはいえ馬車の通行に不都合なほどではない。 「ポン様。1つお願いがあります」 「む? なんだ?」 「剣が欲しいです」 「構わないが、初日に与えたものはどうした?」 「普通に持ってますがちょっと重いです」 「なるほど、希望を聞くべきだったな」 「いえいえ、私は奴隷なので希望を聞かないのが普通ではあります」 「むう。使いやすいものを持たせた方が作業の効率が上がるとは思うが……まあいい。剣の重心は手元と剣先とどちらが好みだ?」 「手元です。できれば2本」 「細剣系だな。長さの好みはあるか?」 「刃渡りで言うと支給されたものの半分くらい?」 「こんな感じだろうか?」 「そうそうそれ位……もう出来たニャ⁉︎」 「今更驚くな。鞘を作ってやるからもう少し待て」 「そーいえばこの剣も目の前でサクッと作ってましたね」 「そちらは私が愛用している型だ。故に作りやすい」 「ポン様なりの手抜きだったんですね実は」 「……作り慣れている分クオリティは高いはずだ」 「ところでソレは普通の剣ですか?」 「む? 普通の鉄剣だな。どういう意味だ?」 「いえ、ポン様が作る剣だから普通じゃないかも知れないなと思っただけです。要望ではなく」 「そんな……いや有り得るか。そういう確認は大事だな。せっかくだから魔力を通せば折れにくくなる仕様にしてやろうか」 「いいんですかニャ?」 「構わん。大した手間ではない」 かつて使用したことのある魔剣の魔力回路を柄の部分に仕込む。鉄の魔力伝導性はあまり良くないので大幅な強化がされるわけではないが、下級の依頼をこなす程度ならば問題なかろう。 ちなみに剣身の方に仕込むと魔力を通していない時に逆に折れやすくなる。剣身の中に穴が空くので当たり前の話ではある。 そうこうしている内に高級住宅街に入ったようだ。外の景色に気付いたのか馬車の中が騒がしくなってきた。
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