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その夢はいつも、とある鄙びた駅から始まる。
駅とはいっても止まるのは電車ではなく、空を行き交う宇宙船。つまり俗に言う宇宙駅というやつだ。
現に、その駅の本当の名は「第六十五番ターミナル駅」というのだが、地元の人間はただ「宇宙駅」とだけ呼んでいた。
さて、この宇宙駅。ターミナルと名のつく通り、とある路線の終点に当たるのだが、そんなどう時代が動こうと発展する見込みもないこの場所に、代々駅長を務める酔狂な一家が住んでいた。父、母、娘の三人暮らし。一人娘の名はアカーシャという。
どこから話を始めたものか。本当に最初から話を始めるのであれば、アカーシャの生い立ちから始めるべきだろう。
アカーシャの父母は駅長という職に誇りを持つ人間だった。アカーシャもその血を色濃く受け継ぎ、駅長であることを誇りに思うようになっていった。他に将来の選択肢が無いことを周囲の人間は哀れがったが、アカーシャはそれを気にもしない。それどころか、幼いころから父母の仕事を見よう見まねで覚え取り、十四の歳にはもう立派な駅長として活躍できるまでになっていた。
さあ、本題に入ろう。アカーシャの世界が一変したあの日の話だ。
その日、最終便を見送ったアカーシャは奇妙な出来事に遭遇した。
本来は中型宇宙船が通るべき、塗装の剥げた重力制御装置の道に、当然といった顔で白銀の龍が滑り込んできたのだ。
煌めく鱗に長い髭。大きく裂けた口からは鋭い牙が覗いている。
それは本当に前触れもない出来事で、アカーシャはひどく混乱した。混乱していたのだが、所属不明の宇宙船には名を尋ねる規則になっていたので、アカーシャはいつも通り声を張り上げた。
「そこの船舶、名前は?」
「ウムルメルト。……きみは?」
思いがけず知性的な声が龍の口から響き、アカーシャは呆然としながらそれに答えた。
「私は、アカーシャ」
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