第1話:女の子を拾ってきた

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「おおう。確かにこれは俺にやってこいって言うわ」  目の前にいたのは、目が真っ赤な竜だった。体の大きさはよく分からないが、近くに生えている太くて大きい樹と大きさが大して変わらないから、だいぶ大型な部類に入るだろう。この地域にそもそも竜など生息できるわけがないのだが、何かあってここにやってきてしまったのだろう。迷惑な話だ。 「んで、こいつは追っ払えばいいはずなんだが」  どうも様子がおかしい。話し合いができればいいが、あの目はどう考えても理性を失っている。  竜が口を開いた。俺に向かって火を噴いてくる。 「おお!」  慌てて土の壁を作る。そして、魔法を使って体を浮かせた。さて、と思って見ていると、背中になぜか剣が刺さっているのが見えた。どうやら、討伐されそうになって逃げてきたらしい。そもそも竜など放っておけば害はないのだが。  竜の上に乗っかるとさらに竜が暴れだす。また面倒な。大きく太い剣だった。剣の刃がほとんど埋まっている。これは痛いだろう。  剣を抜くと、竜の体からはさらに血が流れる。急いで傷口に手のひらを向けると、治癒魔法をかけた。あまりこの手の魔法は得意ではないのだがしょうがない。 「ほい、完了っと」  気がついたら竜が大人しくなっていた。そりゃあ、こんなものが刺さっていたら痛いに決まっているだろう。竜から飛び降りる。なんか顔を寄せてきたのでどうやら感謝の意を示したいらしい。目の色も赤から緑に変わっていたので、もう暴れることはないだろう。 「じゃあな、竜さん。達者で暮らせよ」 「ぎゃおお」  竜が佇んでいるが、特段問題ないだろう。おっぱらえと言われたが、放っておけば大人しい、なんだっけ。ああ、深い青色の竜だから蒼竜(そうりゅう)か。だからむしろいてくれた方が安心だ。餌はイノシシとかシカだから農作物を荒らされないで済むはずだ。     
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