第一章 ゴム大好き

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 高校時代、職員室に呼び出されて、担任の大久米(おおくめ)先生から、こう脅された。  「絶対に秘密だからな!」  高校時代の俺は矛盾の塊で、元気があり余っているわりにはスポーツが超苦手で、「孤独が好きだ」と言うわりには群れたがり、「根性!」を口にしては、その根性を求められる場面に遭遇すると、「かったるい!」と、叫んで逃げだし、「ハンパはしねえ!」と、強がってはハンパなく少年課の警官や学校の生活指導部に媚びへつらい。先輩、後輩、男女の見境なしに生活指導部へ売って、売って、売り飛ばした。つまりサイテーな野郎だ。売った奴らは、特殊な恩赦がねえ限り、停学、退学、そして家庭裁判所、または精神科のお世話になった。中には教室に自分の席がないので泣き出す奴もいたが、俺から言わせれば、《そんなの自業自得だろうが! ベイビー!》だった。  潔癖症というか、見てみぬフリができねえ性格というか、とにかく親父譲りで曲がったことが嫌いだった。  ただし他人限定で! 自分には甘納豆に蜂蜜かけたくらいにあまーく、天使のように優しくなれた。  これは言い訳させてもらえば学校の裏ルールで、学年の中で必ずひとり、ふたりは監視役が選ばれるんだ――つまり断ればこっちがヤバい。  俺が通っていた高校は都内でも有名なヤンキー高校で、通学してるのはワルばかり、学内の治安を守るためには先生たちじゃ、全然足りない。だからもう一つの目がいるってわけさ。  当然、バレたら集団リンチされるので、その正体は明かされないが、生活指導部のスパイを生徒一同、《犬》と呼んで忌み嫌っていた。  で、どういった経過か知らないが、入学早々デンジャラスな役目に選ばれたのが俺だった。  ちなみに俺を《犬》に選んだ大久米は百九十センチの身長で、髭面の容貌もあって、《大熊》と渾名されていた。  俺は「大丈夫です。誰にもしゃべりませんよ。しゃべりゃ、こっちが激ヤバっすよ」と、わざとらしくもみ手をしながら、愛想笑いを浮かべた。
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