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そんな俺が三年になるまで何を考えて暮らしていたかって?
いきなりだが、推理作家、横溝正史先生の犬神家の一族という小説に登場するゴム仮面の男を知っているだろうか? 戦争で顔を傷つけられて隠しているんだが、そんな彼の存在が名探偵、金田一耕助を大いに悩ますことになる。
聞いて驚きな……。あの、のっぺりとした肌色をしたゴム仮面の男をうすぼんやり思いながら暮らしていたのさ。
キモイだろ?
えっ? なに言ってんだかわからないって?
つまり、この俺、逸島卓(いつしますぐる)は二〇〇六年の冬、ゴム仮面の怪人に大いにシンパシーを感じて暮らしていたわけさ。
本当の自分を隠して、薄っぺらなゴムで素顔を覆い隠して生きていく……。ニヒルだぜぇ。
ちょびっと窮屈な毎日だったが、俺は危険を買う男だ。度胸一本槍で、人の人生を蹂躙しまくった。
へへへへ、あの《青春》が忘れられねえ! 純粋に他人の学生生活をぶっ壊すのが爽快だった。
もちろん俺から情報を仕入れた空手部顧問の大熊は不良どもから《エスパール米(まい)》とか《おお! こわ~!》と、渾名するほどビビられた。
その功績の裏には影のヒーローである俺の活躍があったわけさ。
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