第一章・続2

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「木葉刑事、男らしく無いぞ」 「‘らしく’生きた事、これまでに無いッス」 木葉刑事の返しに、里谷刑事は昼間の彼を思い出し。 (出す処が、限定過ぎるのよ) と、先に歩き始めた。 さて、何となくイタリアンみたいな店の構えで。 中に入ればクラッシック音楽の掛かる、どちらかと云えば喫茶店みたいな雰囲気の店だった。 カウンター席が12と絵画を模様にした仕切りに区切られた、二席から多人数と成るテーブル席が広がる店内。 ウェイトレスと云うのか、女性版のギャルソンの格好をした店員に誘われ、向かい合うテーブル席に入った。 席に就くなりに里谷刑事はワインを頼むが。 まだ身体に軽い違和感の在る木葉刑事は、食事のみでジュースを頼む。 さて、料理を待つ間に。 水をゆっくり口へ含む木葉刑事が先に話をし初め。 「さっき、遠矢の事を調べてる先輩から連絡が来ましてね」 「さっきの電話?」 「はい」 ちょっと沈んだ木葉刑事の様子から、里谷刑事も調べが難航していると解る。 「確か・・誰の差し金か、ウザい弁護士が付いたみたいね」 「らしいです。 自分の殺人未遂はまだ確定としても、向坂さんの事件は死体遺棄を付けた傷害致死が妥当にするしか無いみたいな事を…」 ワインを呷る里谷刑事で、遠矢なるライターを永久にぶち込みたいから。 「ん・余罪、相当に在る筈よ。 其処さえ解れば、絶対に仮釈放無しの無期に成るわ」 と、願望込みの推測を言った。 また水を飲む木葉刑事は、窓の外の街灯下の往来を見ながら。 「ですが、奴の絡む先には、暴力団やら政治家やら企業の権力者が居ます。 奴から罪を暴かれたく無い場合は、その弁護士を通じて証拠隠滅を計るでしょう。 何処まで立件が可能か・・、暗中模索みたいッス」 池袋の駅も見える窓の外を見る里谷刑事も。 「チッ。 悪い奴らってのは、何処までも…」 然し、其処は木葉刑事の方が冷静だ。 「ま、悪いことをしている方が、こんな時の為の自衛手段を確保してますよ」 埒が開かない闇にモヤモヤする里谷刑事。 ワインをグラスに流しながら。 「只の無期なら、20年もしないで出所するわ。 その頃は古川さんの娘さんだって、家族が居るかも知れない。 不安が残る決着は、余り嬉しく無いわ」 その不安は、遠矢を担当する刑事全員の不安だ。 だから、内心で苛立ちが沸く。
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