第一章・続2

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朝からかしわ餅をパクつく木葉刑事は、口の中を空けると。 「・・まぁ、自分への殺人未遂は刑事等の目の前でしたからね、俺の殺人未遂は確定でしょうよ」 「ふぅ~ん。 その割には、何だか焦ってるみたいな感じだが?」 木葉刑事も、遠矢を渡した手前で色々と情報を貰える立場に在り、遠矢に関わる捜査本部の焦りは知っていた。 「恐らく、問題は向坂さんの事件の方でしょうね。 殺人で立件したい本部ですが、検事は傷害致死で確実性を得たい構えでして・・」 「検察と本部の意向が食い違ってるじゃないか。 もしかして、殺害に対する証拠が無いのか?」 「いえいえ、証拠と云えるモノは、鑑識の調べから出たハズですよ」 「ほう」 其処へ、‘ミスター・ワイドショー’と渾名される如月刑事が出勤してきて、横から飛び込む様に会話へと入って来る。 「てか、その女子大生の事件の方。 あの新人のアイドル鑑識の〔智親〕《ともちか》が、夜叉こと片岡さんと現場と成った寺の境内に行って。 ばっちり、証拠を見つけ出したってさ」 話好きの如月刑事に、テーブルへ腰を預けた形の市村刑事が。 「バッチリって、事件発生から一年半以上も経過してたンだろう? それなのに、そんなしっかりした証拠が見つかったのか?」 「みたい。 何でもあの被害者を呼び出したって云う寺で、争って押し倒した映像を元にして境内の木を調べたらサ。 意外にも、大量の血の後が出たってさ。 然も、根っ子の(うろ)に突っ込まれたゴミに、そこそこ古いケド固まった血がベッタリだったって…」 木葉刑事は、其処から繋ぐ様に。 「そういえば、奥多摩まで遺体を運んだルートも、オービスやら防犯カメラに映ってたとか」 ガクンと頷いた如月刑事は、さも自分が捜査したかの様に。 「あ、それから、‘向坂’って云う女子大生の元彼が遠矢に言われて、公衆電話を使って呼び出したのも確認されたよ。 元彼も、殺人か傷害致死の片棒を担ぐか、担がないかの瀬戸際だ~。 ペラペラらしいよ」 其処まで聞いた市村刑事は、 「そうなると、2つの事件は確定だな」 と、理解する。 コーヒーを一口飲む如月刑事も、 「・・だぁな~」 と、またカップに口を付ける。 それなら何で・・と最初の疑問へ帰る市村刑事は、木葉刑事へ向いて。 「なら、何でピリピリしてるんだ?」 そもそもの疑問へと話の流れを戻した。
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