第一章・続2

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木葉刑事は、次のかしわ餅を口にしてしまった処。 すると、昨日までは連続強盗の捜査本部に居たが、もう解散したので此方に来て居る篠田班長が。 「そんなの、決まってるだろうが。 あの遠矢って奴には、明らかに成って無い沢山の余罪との関与が疑われてる。 然も、海外と違って、日本の‘無期懲役’じゃ~刑務所の態度次第で出所も有り得る。 もし、何年経とうが出所して来たら、また薄汚いやり方で悪事を働くさ。 その悪事が解る時は、新しい被害者が出る時。 焦ってる向こうの捜査員は、他の余罪を明らかにして、ヤツを死刑にしたいのさ」 死刑と云う罰則に対して、人の考え方はそれぞれだが。 死刑を敵討ちの様に捉えるのはキライな市村刑事。 刑事の口より死刑にしたいと出て、その端正な顔に一抹の困惑を臭わせると。 「班長、噂には聴いてますが。 ‘遠矢’って奴は、そんなにあくどい奴なんですか?」 すると、珍しく篠田班長が目を険しくして。 「当たり前だっ。 あんな奴、人が見て無いなら・・俺が撃つ」 温和で気の弱い方の班長がそんな事を云うなど、市村刑事には意外過ぎた。 だが、今。 木葉刑事への殺人未遂で遠矢を逮捕し、向坂 遙果さんの事件を含めて調べてはいるが。 もう、拘留する事が出来る期限が今日に迫る。 木葉刑事への殺人未遂は、調べがすんなりと行き過ぎて居て。 担当の検事は、追加の拘留請求をしても、裁判所の受理は難しいと判断している。 捜査本部としては余罪追求の為に、‘向坂’なる女子大生殺人の容疑で再逮捕するだろう。 然し、もう彼女の事件についても、証拠や供述はほぼ揃っている。 警察としては、向坂さんの‘殺人’で起訴したいだろうが。 遠矢の供述は、‘傷害致死’と‘死体遺棄’。 彼女が死んでしまい、強迫やら強姦の証拠がイマイチ薄い。 ペラペラ喋って居る元彼の証言が何処まで遠矢を追い詰めてくれるのか。 それは、警察側の願う処まで及んでくれるのか、まだハッキリしないのだ。 遠矢と警察の攻防は、まだ道半ばだった。 遠矢のことについて話す篠田班の面々。 他の刑事が出勤してくれば、遠矢の関わった疑わしき事件の影が潜む話が次々と語られる・・。 遠矢の事を知らない刑事に、その話は驚きを誘うものでしかなかった。
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