第一章・続2

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そして、篠田班が勢揃いしてから、部屋で待機する昼前の11時過ぎ。 上石神井に在る戸建ての家で、老婆の遺体が発見されたと云う。 篠田班に、捜査担当の指令が下った。 車の運転をする木葉刑事は、里谷刑事と飯田刑事を乗せて現場に向かう。 その車中にて。 「う゛~、お腹が減った」 お腹をさする里谷刑事が唸る。 「全くだ。 愛妻弁当を食べる暇が無い」 とは、ちょっと不満げな飯田刑事。 空腹の里谷刑事は、 「サラッと幸せぶるな゛っ」 更に不満を募らせる。 然し、急に覚めた顔をする飯田刑事は、後部座席で優雅に脚を組み。 「里谷、その不満は食欲と関係無い。 羨ましいなら、早く結婚しろ」 つい先日、若者達の起こした傷害事件では、散り散りに逃げ出した若者達の所為で合コンに行きそびれた里谷刑事だから。 「うお゛ーーーーーーーーーっ!!!!!! あのクソガキ共等め゛ぇっ! 散り散りに成って電車とバスとバイクに分かれたのが悪いンじゃーーーーーーーーー!!!!!!」 車内にて、大迷惑なほどの大声を上げる。 その一件の詳細を知る木葉刑事なだけに、顔は迷惑そうにしながらも。 「里谷さん、勢い余ってバイクの方を車で追い掛けて、神奈川まで行きましたもんね」 「言うな゛ぁぁぁ!」 助手席の怪物が煩く、運転に集中が出来ない木葉刑事と。 幸せは手に入れ、勝ち誇る笑みを浮かべた飯田刑事。 木葉刑事のカバンに‘甘食’が在ると知るや否や、野獣の様に引っ張り出した里谷刑事は、合コンに行けなかったことを嘆いて居た。 さて、上石神井と石神井の狭間にて。 現場に来た木葉刑事達は、年季を経たブロック併に囲まれた、小さい平屋に来た。 開かれた玄関からは、鑑識や所轄の人間が出入りする。 野次馬も来て居る中でテープを潜ると、‘歯抜けの狸’みたいな印象の、鑑識班班長の〔進藤〕なるジサマがやって来た。 「お゛~、木葉ちゃん。 よ~やく、現場復帰じゃん」 言われた木葉刑事は、二人の刑事と一緒に落ち合って。 「進藤さん、状況は?」 鑑識がウロウロする部屋を玄関先に立って見返す進藤鑑識員は、 「殺意の在る殺しかどうかは、ハッキリしないがよ。 おそらくは突き飛ばされて、頭を強く打ったのは確かだと思う」 古めかしいトタン屋根の一軒平屋で、住んでいた〔茂坂 すず〕《もさか すず》さん77歳が死んでいた。 発見者は、近所の住人。
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