第一章・続2

8/31
前へ
/31ページ
次へ
さて、面子が揃って、事件の発覚から通報までの経緯、鑑識からの報告や機動捜査隊が聞き込んだ情報が報告されると。 木葉刑事は突然にすんなり手を上げた。 「失礼します、管理官。 篠田班の木葉と言います。 一つ、宜しいでしょうか」 場に居る刑事達が一気に木葉刑事を見る。 前面に座る指揮系統の中で、ぽっちゃり系の郷田管理官が、 「事件に関係在る事ですか?」 と、鋭く聞き返して来た。 その言葉に、何故か横を向いた里谷刑事は、 (それ以外で、ナニを話すのよ) と、呆れてしまう。 まさか、この場で管理官の好みのタイプを聴くとは有り得ない事だ。 一方、木葉刑事は、 「はい。 今回の被害者は、どうやら捜査二課の特殊詐欺対策班がマークしていた人物らしく。 その情報について、捜査二課の刑事さんにも話を聴こうと、同行して貰いました。 もし、管理官さえ宜しければ、この場で説明を一緒に聴いて頂けたら・・と」 と。 いきなり、捜査二課とは…。 集まった捜査員達に軽いざわめきが起こる。 先に着いた機動捜査隊も、所轄の刑事課も聴いて無かった。 迅は、先輩刑事に言われ、進藤鑑識員に挨拶しただけだった。 さて、新米管理官と云う事で、小山内理事官と云う一課長の片腕的存在も居るのに。 郷田管理官は、その人物に相談もせず。 「分かりました。 此方へ呼んで下さい」 と、応えた。 廊下に顔を出した木葉刑事の声で、捜査二課の特殊詐欺事件を扱う居間部刑事と、主任(班長)の〔導〕《しるべ》警部が入って来た。 窓側に椅子が用意されて、二人がパイプ椅子に座る。 早速と郷田管理官は、 「捜査二課のお二人は、被害者をマークしていたとか。 今回の事件に関係が有りそうならば、是非にその内容を教えて下さい」 と、言う。 すると、立ち上がろうとした居間部刑事を抑え、導主任が立ち上がった。 ちょっと神経質そうで身嗜みに注意の欠けた、胡麻色の髪を乱した痩せ形の人物で在る。 「今回の事に関しましては、此方の不手際も在ります」 と、頭を下げた形で、捜査の話をし始めた。 さて、殺人まで起こった今回だが。 実は、裏に新手の詐欺が関係していた。 その詐欺商法は、ある種の霊感商法に近い物なのだが。 “持って居るだけで、振り込め詐欺を撃退する事が出来る” と、云う触れ込みのモノだ。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加