第一章 才能の誕生

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「やった!! やったぞ!! ついに夢の町ウィーンに進出だあっ!! イヤッホウ!!」  喜び余って踊り狂いながら、勢いよく酒場に飛び込む。 「父さん!!」  ぼくが走り込んでいくと、 「息子よ!!」  と、彼はぼくを抱き締める。 「ウィーンに行くそうだな!」 「あれ、もう知ってるの」 「もちろんだ、さすがは俺の息子だ!」  彼は腕を振り上げてこの朗報を宣伝する。  ちぇ、噂の方が早かったのか……まあ、どっちみち耳に入ったんだからいいか。 「主役が来たところでもう一踊りといこう!」  と、父はいきなり軽快に踊り出す。  テンポの速い音楽、酔いどれたちのひやかし……いつものことだ。  ぼくが諦めて腰をかけると、 「ルイ、いい女ひっかけてこいよ」  と、すぐそばのろくでなし野郎が、何のつもりでかそんなことを言ってくる。 「こんな田舎の女、目じゃないぜ。都会の女は化粧上手で床上手!」  周りの酔っ払いたちは腹をかかえて笑い出す。 「うるさいぞ!! 雑魚野郎ども!!」  ぼくは音楽も笑いも振り切って、彼らを睨み付けた。 「いいか、よく覚えとけ! 近いうちにおまえたちのその腐った生活ひっくり返してやるからな!」  と……それで起こった笑いなどもう無視して、 「父さん、帰ろう!」  と、調子に乗って踊り続けていた父を引っ張って店を出ようとする。しかし出口のところで今度は店主に取っ捕まった。 「坊や、お怒りのところ申し訳ないんだけど……」 「勘定だろ! これ持ってるぶん全部だ!」  ぼくは苛立ちながら、とりあえず今日のぶんだけ払って、彼を連れてさっさと店を出た。
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