1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひっ」
彼女は思わず小さな悲鳴を上げる。現れたのは人間じゃなかった。いや、正確には人間のように二足方向でたっていたが身体中毛で覆われておりナイフのように鋭い爪、極めつけは犬のような顔。
「ば、化け物・・・」
慈はそう口にし後ずさるとそれを追うように化け物も彼女の方に歩み寄る。慈は再び悲鳴を上げて元来た道に身を翻して逃げ出した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
化け物から逃げた慈は近くにあった路地裏の物陰で身を隠していた。
「なんなのあれ」
彼女は震える声を押さえてあの化け物を思い出す。人間とは違う異形の存在。それは自分の事をずっと見つめたいた。
間違いなく自分が狙われているんだと理解して体が震える。
「そ、そだ。颯君なら」
慈は思い出したようにコートのポケットからスマホを取り出す。彼なら何とかしてくれる。そんな根拠もないが頼れる人はいないのだ。
「・・・・・・」
震える手でスマホを操作、何とか彼の連絡先に繋げることができた。お願い、早く出てと小声で呟くこと数秒、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「むっ。どうした、慈」
堅苦しい颯の声に慈は安心して泣かそうになるがそこを堪えて幼なじみに助けを求める。
最初のコメントを投稿しよう!