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「た、助けてっ颯君!!怪物が現れて、それで襲われてっ!!」
「落ち着け慈。怪物がどうしたんだ?」
幼なじみの半狂乱の雰囲気にただならぬ雰囲気を感じとりながらも努めて冷静に話を促す。
「だからねっ!!今怪物に襲われているのっ!!信じられないかもしれないけど本当なのっ!!」
「っ!?分かった!!今からそっちに向かう。だから君はそこで大人しく――――」
何かを察したかのように彼の声が大きくなったが途中で後ろから何者かの手が伸びてきてスマホを取り上げられたせいで途中から颯の声が聞こえなくなった。
「・・・え?」
慈は恐る恐る振り向くと先ほどの怪物が立っていた。その手には慈のスマホが握られていた。
怪物の手に持っているスマホから慈?慈?!と、颯の声が聞こえていた。怪物はそれを物珍しそうに見ていたがピッ、とボタンを押し通話を終了させた。そしてゆっくりと彼女の方に振り返る。
「い、いや」
慈は後退するもの後には物置き場になっているのでもう逃げ場はない。
「誰か・・・」
怪物はスマホを投げ捨て彼女を方に歩いてくる。やがて追い詰められた彼女の前で立ち止まる。
「誰か・・・誰か助けてっ!!」
涙を浮かべながら彼女の悲鳴を聞きながら怪物は鋭い爪を振り上げた。その時。
カツン、カツンと音を立て暗闇の中から何かが此方に向かってくる。その音に慈も怪物もその音がする方向へと視線を向けた。それは、人の形をした何かが遂に彼女達の前に姿を表す。
それは暗くてよく見えないが赤い複眼だけが闇の中でも輝いていた。
「ガルルル」
「・・・ふっ!!」
それは短く息を漏らした後、うなり声を上げる怪物に向かう。
「ふんっ!!」
彼は素早い動作で怪物に詰め寄り、殴り付ける。殴られた怪物は壁に叩きつけられ動かなくなる。
「あ、あの」
助けてくれた者なおずおずと声をかけるがそいつは黙って
自分が来た道を指差す。言葉はなかったが恐らくは逃げろ、と言っているように見えた。
「あ、あのありがとうございますっ!!」
慈は言葉を発しないそれに頭を下げると彼が来た道へと走った。
《animalMaxpower!!ギルティストライク!! 超coolに here we go !》
後ろから聞こえる軽快な音声と共に小さな爆発音が聞こえたが彼女は振り返らなかった。ただひたすらに自分の家へと走った。
これは2年前、高原慈が経験した最初の事件である。
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