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「お待たせしました、親子丼の上です。」
店員の運んできた親子丼。上品な光沢のある黒い器の上に綺麗な半熟な卵と真ん中に生の黄身。
旗本は口に親子丼を運ぶ。
「うん、美味しい。」
旗本の顔はパッと笑顔になる。
「あぁ、和泉君さっきはありがとうね。私、子ども嫌いじゃないけど焦ちゃって。和泉君子ども好きなの?」
旗本は真っ直ぐな視線で和泉を見る。その眼はまた和泉の脈を少し速くする。
「えぇ、嫌いじゃないですね。でも旗本さんも凄いですね。あんな時でも冷静で直ぐにお母さん見つかったのも旗本さんのおかげですよ。俺、子どもの気を紛らわすので精一杯でしたし。」
和泉の褒め言葉、旗本は自分の事を見られていたと思うと何だか照れ嬉しい感じだった。
「…和泉君って…子どもにも好かれるんだよね。…なんと言うか…あれだね。」
「あれ?」
「…ちょっと言葉が出てこないけど…、
なんと言うか…悪い人じゃないのが滲み出てるんだよね。
無害そうって言うのかな?」
旗本は言葉が出てこなくて直ぐに両手を振る。
「なんかごめんね、いい言葉出てこなくて!」
だが、その言葉。和泉の脳裏を凄い早さで駆け巡る。そして前川係長の言葉が戻ってくる。
「…嬉しいです。」
「ええ、嬉しいの!?変なの!」
旗本はおかしい和泉のリアクションを笑っている。和泉は小さくガッツポーズをしている。
「はい、嬉しいです!」
「…やっぱりちょっと変わってる?」
二人はそんな会話を楽しみながら食事を楽しんでいった。
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