118人が本棚に入れています
本棚に追加
その棚卸しの日がやって来た。この日旗本も三原部長代理も早めに仕事を終える。
そして駅前のバーへ二人で行く。
「…それじゃ乾杯。」
「今日はノンアルコールで短めに。」
二人はグラスをぶつける。
「どうなんです?奥さん、やっぱり帰りが遅いのが心配って?」
「あぁ、婚約したのに帰りが遅いとよく言われるよ。タイミングが良いのか悪いのか、昇進して慣れなくてな。」
三原は少し怒りを吐き出している。いつもより低い声が大きなボリュームで出ている。
「…そう言えば、旗本君。君はここ最近顔色も仕事も良いね。何かあったのかな?」
「…うーん、そうですね…。」
旗本はグラスに映る自分を見つめる。
「色々と吹っ切れましたね。だからもう前に進めるというのか、進むべき方向が見えてる気がする。そんな感じです。」
「…そうか…良いな、旗本君はキラキラして。」
「そんな言い方、しないで下さい!」
旗本は三原の肩をつつく。
その後も三原の話を旗本は親身になって聞き続けた。奥さんにどうやら最近は色々と言われてるらしい。
「…今日はありがとう、少し私も気が晴れたよ。」
「いいえ、また迷惑無い程で。」
「駅まで送ろう。」
「えっと…はい!」
旗本は駆け足で三原の横に。すっと腕を軽く掴みながら進む。
そのまま駅が見えるビル街まで来る。すると旗本は三原の手を離した。
「?」
「すみません、実は私もこの後少し、別の予定があるんで。」
「そうか…、わかったよ。」
「お疲れ様です。」
旗本は深く頭を下げて三原を見送った。
最初のコメントを投稿しよう!