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次の日、琴音と一緒に登校すると幸也が校門のところで待っていた。
「ゆきちゃん、昨日はマジでごめんな。俺、言葉足らずで」
「ううん、私も泣いたりして恥ずかしいから、もう忘れて」
私が微笑むと、幸也はまたバツが悪そうな顔をした。
「もういいでしょ?」
そう言って、琴音が私と幸也の間に割って入って来て、何かを幸也に囁いたのが分かった。
あれ・・・?何だろう?ちょっと琴音の幸也への態度が他の男子とは違う気がする。
そう気が付いてから、自然に琴音の幸也への言動に目が行くようになった。
放課後は2人で買い物をする予定だったけど、例のごとく男子たちにつかまった。そして、その中には幸也もいた。
幸也が並んで歩く私たちの方に寄って来ると、琴音は自分から幸也の横に並んで歩くし、幸也が話しかけたそうにしているのをいち早く察して、自分から幸也に声を掛けている・・・。
私は昨日の電話を思い出した。幸也から何か言われたかと、琴音は神経質に感じるほど気にしていた。
もしかしたら、幸也と付き合うことになったか、幸也が琴音に告白したか・・・じゃないだろうか?
普段の琴音ならすぐに私に話す。そして、誰かと付き合っても私を優先してすぐに「ゆきと一緒にいる時間が減る」と不満を言って別れてしまう。
だけど、幸也は別格なのかもしれない・・・。
今のところ、ずっと私が傍にいるから2人で付き合っているという感じはしないけど・・・私よりも優先したい相手だと自覚してきたのではないだろうか?
私が雑貨屋で小物を見ていると、店の前で幸也が琴音を引き留めて話しているのが見えた。幸也が何かを囁いては、琴音が笑いながら「絶対にダメ」と言って、また幸也が真剣そうな眼差しで、必死で何かを囁いていた。
「今日はゆきが家に来るから、ゆきと2人で帰るからね」
琴音の言葉がはっきりと聞こえた。
確かに今日は母親の帰りが遅いから、琴音の母親に一緒に夕食をと言われていた。
だけど、そういうのが2人の恋路を邪魔するのは良くない。
そう頭で思いながらも、心は寂しくて・・・。
それでも、私は琴音の親友だと胸を張りたいから、私が琴音に執着して琴音の邪魔をしたくはない。
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