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「ちょっと、有星さん、大丈夫!?」
表情を変え、すぐに駆け寄って、両腕で彼を抱える、綾香。
「おい、有星っ!」
有星の顔色はさらに悪くなる一方で、唇は紫色に腫れ上がっていた。
メガネの奥の瞳も、焦点が合ってない。
「おい、ちょっと待てよ! 有星! 大切なものを守るんだろ! お前が先に死んでどうすんだよ!」
涙を滲ませて、叫ぶ、歌野。
「う、歌野……あ、綾香を……頼む……」
綾香の腕の中で、有星はそれっきり何も喋らなくなった。
綾香の白いスーツにも、血がべっとりと付着している。
「お、おい! 有星! 有星ぃーー!」
歌野の叫び声が、虚しく廃倉庫に広がっていく。
がっくりと肩を落とす、歌野。
首をうなだれる、綾香。
しかし、彼女はハッと何かに気付く。
その瞳は真っ直ぐに有星を見下ろしていた。
「大丈夫だよ!ちゃんと脈があるし、呼吸している!」
「助かるんですか!?」
「ちゃんと病院に運べば、大丈夫」
どうやら、大立ち回りの疲れで気を失っただけらしい。
「なんだよ、ワンコのくせに、心配させやがって」
とたんに悪態をつく、歌野。
有星はパトカーに乗ってやってきた黒田課長の元、無事に警察病院へと搬送された。
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