横浜港の廃倉庫 午後四時

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「ちょっと、有星さん、大丈夫!?」  表情を変え、すぐに駆け寄って、両腕で彼を抱える、綾香。 「おい、有星っ!」  有星の顔色はさらに悪くなる一方で、唇は紫色に腫れ上がっていた。  メガネの奥の瞳も、焦点が合ってない。 「おい、ちょっと待てよ! 有星! 大切なものを守るんだろ! お前が先に死んでどうすんだよ!」  涙を滲ませて、叫ぶ、歌野。 「う、歌野……あ、綾香を……頼む……」  綾香の腕の中で、有星はそれっきり何も喋らなくなった。  綾香の白いスーツにも、血がべっとりと付着している。 「お、おい! 有星! 有星ぃーー!」  歌野の叫び声が、虚しく廃倉庫に広がっていく。  がっくりと肩を落とす、歌野。  首をうなだれる、綾香。  しかし、彼女はハッと何かに気付く。  その瞳は真っ直ぐに有星を見下ろしていた。 「大丈夫だよ!ちゃんと脈があるし、呼吸している!」 「助かるんですか!?」 「ちゃんと病院に運べば、大丈夫」  どうやら、大立ち回りの疲れで気を失っただけらしい。 「なんだよ、ワンコのくせに、心配させやがって」  とたんに悪態をつく、歌野。  有星はパトカーに乗ってやってきた黒田課長の元、無事に警察病院へと搬送された。
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