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「またコイツと組むんですか!?」
神奈川県警横浜管内、港湾署の刑事課。
スーツ姿の男女が、忙しそうに動き回っている。
グレーの簡素な事務机を挟んで、歌野(うたの)は黒田課長に食って掛かっていた。
黒田課長はかつて、ハマの黒豹と怖れられた名刑事。
濃いめのサングラスの奥には、大きな傷跡を隠す。
しかし、今はクセのある部下に手を焼く中間管理職である。
「俺だって歌野と組むのはゴメンだ」
眼鏡の奥、キラッと光る知性を滲ませて、有星(ありほし)が言い放った。
二人とも港湾署が誇る敏腕刑事ではあるが、何かにつけ、いがみあっている。
「まあ、まあ、二人とも、そんなにケンカしないの。仲がいいのね」
白いピッタリとしたスーツ。ハマのワイルドキャットの異名を持つ刑事課のマドンナ、綾香がそうたしなめた。
「綾香さーん。オレ綾香さんと組みたいっすよ。オレいっつも有星とじゃないですか!」
「今回は私は後方支援だもん。期待してるよ。有星さんと歌野くんの名コンビ」
「綾香さんがそういうなら……ってか何で有星は『さん』でオレは『くん』なんですか?」
「さあ、何でだろうね」
綾香は一瞬有星と目を合わせると、意味ありげに微笑むだけで、それ以上何も言わなかった。
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