空き地のホームラン

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「アァァァァァァァァ!」 人の絶叫のような、はたまたカラスの鳴き声にも似たサイレンの音が鳴る。 そのサイレンの音で僕は我に返った。 こんな時でも昔のことを懐かしむ余裕があるというのは、良いことなのかどうかわからなかった。 マウンド上のリュウちゃんは、当たり前だが小学生の頃とは別人のように大きかった。 「プレイボール!」という審判の掛け声が響く。 キャッチャーのサインを確認しているリュウちゃんの口元が、少しだけ動いた気がした。 「やっぱり野球は楽しいよなあ、ゆーすけ。さあ2人野球の続きをしよう」 地面からの熱気。アルプススタンドの応援。グラウンドの選手たち。いつか見た甲子園の映像が重なる。もうホームランを打ったって、だれに謝る必要もなかった。 僕はバットを持つ腕に力を込める。 夏の甲子園2日目、第1試合が始まろうとしていた。
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