第1章 1話 選定の儀式

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『糸魔法』 どんな原理なのか、空中に光の文字で描かれた残酷な現実。 その文字を見た周りの子供達は腹を抱え笑い、大人達は侮蔑と嘲笑の入り混じった視線を無遠慮に浴びせて来る。 見た事も聞いた事もない。城内に保管されている魔法書にすら記載のない全く新しい魔法。 振り返れば、両親の顔が落胆と苦悩に酷く歪んでいた。そして、ゆっくりと自分の得た魔法の情報が脳に刻み込まれて行く。 (……ははは、何だよ、これ。チートじゃん) ◇◆◇◆ この世界に住む人間は、年齢が12歳になると教会で【選定の儀式】を受け、必ず1つだけ魔法を授かる。 魔法とは、人の身体に宿る魔力を糧に無から有を創り出す力。 教会の古い言い伝えに寄れば、古の時代に大いなる女神は人に叡智と魔法の宿った果実を与えた、と言われている。 真偽の分からない古い言い伝えは兎も角、今や魔法とは人の生活に深く根付き、もはや切り離す事が不可能な力と言っても過言ではなくなっていた。 それつまり、身に宿る魔力と魔法こそ至高の力であり、価値だとする考えだとする実力主義の思想が俺の住むアヴァーロン王国に根付くのも自然の流れだったのかもしれない。
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