60人が本棚に入れています
本棚に追加
普通の教会ならば、神を模した像などが置かれているが、この世界の教会にはそんなものは存在しない。何故なら、誰も神の姿を知らないからだ。最初は古い資料から神像を作ろうとする声もあったらしいが、「神の姿を人間が定めようなどと神への冒涜だ!」と、初代教皇が宣言して以来作られる事はなかった。
その代わり、神が身に付けていたと言われる砂時計を作り祈るようになった、らしい。
最近読んだ教会の資料の一部を思い出していると、両親がこちらにやって来た。
父は、武官であり昨日もそうであったが、このような社交場が苦手なようで俺よりも表情が硬い。先程からハンカチで汗を拭っている。母は、社交場に馴れているようで表情がいつもより生き生きしている。化粧も良く乗っている。
「父上、緊張し過ぎです」
「儀式が始まる。口を閉じろ、アルヴィス」
「失礼しました」
儀式と言っても、魔法陣の中に立ち神に祈りを捧げれば、魔法名が空中に描かれ、それを確認して終わりだ。
「ファナ・クリード」
まず始めに、男爵家の少女の名前が呼ばれ、床に描かれた魔法陣の中に入った。
最初のコメントを投稿しよう!