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ここがどこかも判らねぇ。
俺が誰かも解らねぇ。
ただ、俺はその真っ暗な山ん中で穴を掘り続けてんだ。
シャベル一本で、だた土を掘り起こして。
灯りは、携帯用のランタンが一つ。
いつから掘り続けてるのかも知らねぇから、ランタンの油が残りどれだけなのかも知らねぇ。
ずっーと、ずぅーっと……
汗にまみれて、泥に汚れて……
俺は、穴を掘ってんだよ。
周りには何もない、ほんとうに何にもだ。
藪と、木々と、夜空ぐらいだ。
星どころか、月すら出てねぇや。
木々の切れ間に、藪の合間に、ぽっかりと地肌が晒されていて。
その地面をさっきから掘ってる。
さっきっていつだよ?
そもそも今何時だよ?
ここはどこだよ?
ほんとにわからねぇ。
こんな山深くまで、どうやって俺は来たんだっけか。
車で山道を上って、あとは徒歩か。
近くには、道路どころか人工物だってない。
静かだなぁ。
土を掘り返す音がやけに響きやがる。
時々、夜鷹なんかが鳴いて。
遠くから、かすかに沢のせせらぎが聞こえて。
なんで俺こんな事してんだ?
なんでこんな場所にいるんだ?
ほんと、何が目的で穴なんか掘ってんだか……。
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