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ドアが引かれ様とする感触がない。
もう、諦めたのか……?
ブブブッとスマホが痙攣した。
メールだ。
開いてみた。
『い れ て』
「うわっ!」
思わずスマホを放り出す。
闇の中、スマホの明かりが怪しく光る。
拾い上げ様とした時、ドアが隙間を作り、光が差し込んだ。
「あッああッッ!!」
ドアが開く。
両手を使って思い切り引っ張る。
バキッと取っ手が鳴った。
今のは、今のは相当開いたんじゃあないか?
それより、それよりもう取っ手がもたない。
助けて、助けて。
ブブブと床のスマホが動いた。
片手を伸ばし、操作する。
『は い れ た』
全身から冷や汗があふれ出た。
頭から水をかぶったように汗が流れ、眉毛を浸透して目にまで入って来る。
嘘だ、嘘だ、嘘だ!
床で光るスマホの明かりで周りを見回すが、光が届く範囲にソイツは見えない。
ブブブ、と神経を逆なでする音と振動。
何も操作していないのに、その画面が開いた。
『こ こ だ よ』
「うああぁぁアアアァァ!!!」
悲鳴を上げ、体当たりでドアを跳ね飛ばして外に逃げ出した。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
クローゼットの外は太陽に照らされ、光に満ちている。
誰も居ない。何も聞こえない。
「ハーッ、ハーッ……フーッ」
振り返ると、クローゼットのドアが僅かな隙間を残して閉じている。
何故、最後まで閉まらないんだ?
あのドアの向こうに何かが居るのか?
違う、きっとスマホが引っ掛かっているんだ。いや、取っ手が落ちたのかもしれない。
居ない。居ない。全部気のせいだ。
クローゼットににじり寄り、隙間に顔をよせ、中を……。
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