第1章

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 左右宇の肘から、ミサイルが飛び出しました。 「な、なななななななな、なにしたんですかー? ななさん」 「音声制御が正しく作動して良かったわ」 「そうじゃなくってぇ」 「だって艦長さん、その辺にある物、何でも使っていいってゆったから」 「それは工具やパーツでしょう。拡大解釈しすぎですよぅ」 「人工心臓を取り出した後の胸の収納スペースには、ガトリングガンを装備してみました」 「してみないでくださいぃ」 「膝の関節には・・・」 「ヒロシマ型、なんて言わないで下さいよ」 「・・・ ・・・ ・・・」 「なんなんですか、その沈黙はぁ。もう、ひとの体で遊ばないで下さいよぅ」  メイが、左右宇の背中をパンパンと叩きます。 「うこん、すっかり元通りになって良かったね。メデタシ、メデタシ」  アントステラは、魔族の真ん中を突き進んで行きます。まおが艦の周りの敵と戦っていると、海から6人のセイレーンが飛んで来ました。 「まおちゃん、ここは私たちに任せて。あなたは先へ行って」 「ありがとう、クララちゃん。みんな、気をつけて・・・」  まおはアントステラを追いかけます。 「さあ、シュラク隊の実力、見せてあげるわよ」  6人のセイレーンは、バトルフォークで果敢に魔族に立ち向かうのでした。  艦に戻ったまおを、黒猫たちが出迎えます。 「おつかれ、ちっち」 「ほんと、まおちゃんの顔の広さに助けられるわね」と、ケイ。 「へえ、まおちゃんて、大っきいだけじゃないんだぁ」  黒猫とケイが、顔を見合わせます。 「「きみぃちゃん・・・、意味違う」」  艦内に、ユキヲ艦長の大きな声が響きます。 「島が見えたぞ。降下する」  アントステラは、ローズウッド島目掛けて降下して行くのでした。 map3 ローズウッド島  メイフェア隊は、島に降り立ちました。ユキヲ艦長がデッキから声をかけます。 「指揮権をお返しするよ、将軍殿。その前に、わしからの最後の命令じゃ。 全員、生きてここへ帰れ。 敵を殺す事が勝利ではない。一人の犠牲者も出さず、全員生き延びることこそが、真の勝利じゃ。 アントステラは上空で待機する」 「ありがとうございました、艦長」 「ありがとう、おじいちゃん」  デッキで敬礼するユキヲ艦長を乗せて、アントステラはオートパイロットで上昇して行きます。  メイフェア隊は、最後の命令を胸に、全員敬礼で見送るのでした。
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