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お昼休み。更紗と恵はいつものように、中庭のベンチで一緒にお弁当を食べていた。
季節はもう秋を迎えている。お日様が優しく暖めてくれるとはいえ、たまに吹く風が少し肌寒い。
どうしてこんなところで食べているのかというと、それにはちゃんとした理由がある。
バスケットボール部に所属していて活動的な恵は、すぐにお腹が空いてしまうらしく、更紗と違ってよく食べる。だから、お弁当箱も大きい。
あれはいつだったか、教室で食べていたころ、心ない男子に恵の大きなお弁当箱をからかわれたことがあった。恵はそれが恥ずかしかったらしく、その翌日から二人は中庭でお昼を食べることに決めた。
ちなみに、多少の雨が降っても、ここには屋根があるから平気なのだ。でもやっぱり、寒さだけはどうにもならなかった。
「ねえ、どしたの、さららん。あんた今日、なんか変だよ。心ここにあらず、ってカンジ」
先にお弁当を食べ終えた恵が、心配そうに更紗の横顔を見つめている。
「え、あ、うん……」
更紗は手の平に収まりそうなくらい、こじんまりとしたお弁当箱を抱え、呆けたようにミニトマトを箸で転がしていた。
「ねぇ、食べないの? 貰っちゃうよ」
「え、あ、うん……」
目の前でミニトマトをさらわれて飲み込まれても、更紗は生返事を返すばかりだった。
「もぅ!」
恵は怒ったように口を尖らせると、いきなり立ちあがり、遠くを指さした。
「あ、朝のおねーさんだ」
「えっ! どこどこ」
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