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更紗は突然、スイッチが入ったかのように目をきょろきょろさせた。しばらくそのまま、そのうちに、がっくりとうなだれて、ぎろりと恵を睨んだ。
「どこにもいないじゃん。めぐのウソつき」
「ごめんごめん。だってさららんってば、なに話してもずっとうわの空なんだもん」
「だからって……」
「だから、ごめんって。あ、おねーさんだ」
「めぐってば、またそんなテキトーなこと言って。もうだまされないんだからね」
「違うよ。本当なんだってば。ほらあっち、見てよ、ほら」
更紗は呆れたように溜息をつくと、お弁当箱に視線を落として箸を動かした。
「あら、お二人は今朝の。御機嫌よう」
本当だった。
「げほっ……っく、ひぃぁ、がは、げほっ」
驚いて飲み込んだご飯が変なところに入ってしまい、更紗は女子高生らしからぬ奇声をあげ、激しく咳き込んだ。
「まあ、大変。これをお飲みなさいな」
黒衣の女性――恵いわく、おねーさんが紙パックのお茶を差しだす。
受け取り、更紗はストローを咥えて、こくこくと飲んだ。
(あれ? これって……もしかして……。間接キッス!)
更紗はお茶を変なところに流し込んでしまい、また苦しそうに咳き込んだ。
苦しいのと情けないのとで涙がでてきた。ちょっとだけ鼻水もでちゃったのは、ここだけの話。
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