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更紗は嬉しそうに笑って、ちょっぴり恥ずかしそうに顔を俯けた。
「あの、あたしも自己紹介していいですか?」
口を挟むタイミングを伺っていた恵が、おずおずと手をあげている。
「あら、ごめんなさい。どうぞ、お話なさって」
「あ、はい。ありがとうございます」
普段聞き慣れない典雅な言葉をかけられ、恵も少し照れているようだ。
「あたしは田中恵っていいます。さららん、いえ、更紗と違って、平凡な名前ですけど」
言って、恵は頬をかいた。
「まあ、どうして? あなたらしい、健やかで品のある名前ではありませんの」
「そう、ですか。へへ……」
恵も更紗と同じように、嬉しくて、くすぐったそうな笑みを浮かべた。
「あ、の……。お姉様のお名前も教えて下さいっ」
突然。意を決したように更紗が口を開いた。
恵が、『いきなりお姉様はないだろう』とでも言いたげな顔をしていたが、更紗は全然気にしてない。いや、気にする余裕すらない、というのが正しいか。
「ああ、あなた達に自己紹介をさせておいて、私が名乗るのを失念してしまったのね。無作法を――」
ごめんなさいましね。と女性は言の葉を継いだ。
「私の名前は北条綾音。一応、この学校の二年生よ。急に転入が決まったものだから、まだ制服もないの」
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