二 おーい、そこのおねえさーん

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 更紗は嬉しそうに笑って、ちょっぴり恥ずかしそうに顔を俯けた。 「あの、あたしも自己紹介していいですか?」  口を挟むタイミングを伺っていた恵が、おずおずと手をあげている。 「あら、ごめんなさい。どうぞ、お話なさって」 「あ、はい。ありがとうございます」  普段聞き慣れない典雅な言葉をかけられ、恵も少し照れているようだ。 「あたしは田中恵っていいます。さららん、いえ、更紗と違って、平凡な名前ですけど」  言って、恵は頬をかいた。 「まあ、どうして? あなたらしい、健やかで品のある名前ではありませんの」 「そう、ですか。へへ……」  恵も更紗と同じように、嬉しくて、くすぐったそうな笑みを浮かべた。 「あ、の……。お姉様のお名前も教えて下さいっ」  突然。意を決したように更紗が口を開いた。  恵が、『いきなりお姉様はないだろう』とでも言いたげな顔をしていたが、更紗は全然気にしてない。いや、気にする余裕すらない、というのが正しいか。 「ああ、あなた達に自己紹介をさせておいて、私が名乗るのを失念してしまったのね。無作法を――」  ごめんなさいましね。と女性は言の葉を継いだ。 「私の名前は北条綾音。一応、この学校の二年生よ。急に転入が決まったものだから、まだ制服もないの」     
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