二 おーい、そこのおねえさーん

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 綾音はこの学校の制服とは異なる、丈の長い黒いスカートに視線を落として、ちょんとつまんだ。  それから綾音は、今日が登校初日であることを述べ、「よろしく」と言葉を結んだ。 「あやね……姉様」  更紗は放心したように、目の前の女性を見つめた。 「ふふ、おかしな子。どうして私に様を付けるの?」 「あっ、あの……その」  更紗はどうしても綾音のことを『お姉様』と呼びたかった。だから、必死になって考えた。 「その、あの、助けて……。昨日、助けてくれましたからっ」 「あら、そうすると。あなたを助けた人は、全員様を付けられてしまうのね」  綾音は口に手を添えて、おかしそうに微笑った。 「……ぅ、うー」  自然な流れだと思ったのに軽くあしらわれて、更紗はしょんぼりと俯いた。 「…………めですか」 「え、なにかしら」 「……ぇ様って呼んだら。お姉様って呼んだら、ダメですかっ!」 「更紗さん?」  更紗の切実な言葉を受けて、綾音は困惑の色をその端正な顔に浮かべた。  それは当然の反応だろう。  昨日初めて会った人間に、いきなり『お姉様』と呼ばれるなんて。誰だって困るはずだ。  でも、更紗はずっと憧れていた。『お姉様』、そう呼べるステキな人が近くにいたらって、いつも想っていた。     
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