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放課後。更紗は部活へ向かう恵を見送ると、自分も部活動をするべく、カバンを持って席を立った。
部室を目指し、のんびりと渡り廊下を歩く。
何気なく視線を動かした更紗の顔に、突然笑顔が花開いた。
視線の先にあるのは、この学校の生徒とは異なる目立つ黒衣。それと、腰まで伸びる長い黒髪。間違えるはずがない。
「綾姉様っ!」
更紗は全力で駆けよった。
「あら、更紗。奇遇ね」
綾音は更紗を認めるなり、にこりと微笑みを浮かべた。
「はい! とっても奇遇ですっごい嬉しいです!」
「あらあら、ふふ……」
よくわからない日本語を使う更紗を、綾音は優しく見守った。
「あ、あのっ。綾姉様は、なにをなさってるんですか」
「校内をね、散策しているのよ」
「そうなんですか。あっ、でしたら、わたしがご案内します。いえ、ご案内させてくださいっ!」
綾音にとって今日は初めての登校日であることを思いだし、更紗は案内役を勇み込んで買ってでた。
「まぁ、それは助かるわ。でもよろしいの? どこかへ向かおうとしていたのではなくて」
言われて、はっとする。更紗は部室へ向かっていたのだ。
「で、でも! すぐに終わりますから」
「そうなの。でしたら、案内をお願いしてもよろしい?」
「は、はいっ!」
更紗は本当に嬉しそうに頷いた。
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