二 おーい、そこのおねえさーん

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「綾姉様。お待たせしました。……って、あれ?」  更紗は廊下にでた。だが、そこに待ち望んだ綾音の姿はなかった。 「……ねぇ、さま?」  途端に心細くなる。  退屈して、もしかしたら愛想をつかされて、どこかへ行ってしまったのだろうか。頭の中に沸いて出た言葉が、更紗の心を不安にさせた。 「……ぇさま。あやねぇさまぁ」  思わず泣きそうになってしまって、更紗は天井に顔を向けた。 「あらあら、そんな迷子のような声をだして、どうしたの?」  顔をおろすと、そこには綾音の姿があった。 「ねぇ……さまぁ」  待ち焦がれた声が、顔が、すぐそこにある。今度は嬉しくて泣きそうになった。 「綾姉様ぁ。どこに行ってたんですか」  更紗は心底安心して、気の抜けた声をだした。 「ええ、ちょっと、花を摘みに、ね」  綾音はどこか恥ずかしそうに、そっとささやく。 「花? ですか」  きょとんとする更紗。綾音はその額を人差し指でちょんと押した。 「厭な子ね。お手洗いの隠語よ」 「あ……、ああ――」  意味がわかるや、そこまで言わせてしまったことが急に恥ずかしくなって、更紗は顔を俯けた。     
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