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「あ、さららんと綾音せんぱいだ! やっほー」
体育館に入るなり、恵の歓声がふたりを出迎えた。
「もぅ、めぐったら声でかいよ。恥ずかしいじゃん」
更紗は本当に恥ずかしそうに、顔を真っ赤に染めて制服のスカートを握り締めた。
「なに、早速二人でデートしてるんだ。いいなぁ」
恵は駆けよってくるなり、もっと恥ずかしくなることをのたまった。
「で、でで、デートだなんて、そんな……」
「さららんってば、照れない照れない」
恵は更紗の頭をぐりぐりと撫でると、ぺこっと綾音に頭を下げた。
「綾音せんぱいっ。更紗のこと、お願いしますね!」
「え、ええ」
綾音が曖昧に返事を返したのと同じくして、恵を呼ぶ声が体育館に響いた。どうやら、練習試合をしていたところを勝手に抜けだしてきたらしい。
「っとと、ごめんね、戻らないと。じゃね、さららん。綾音せんぱいも、また明日」
恵は元気よく手を振り、コートの中へと戻っていった。
「ふふ、元気な良い子ね」
「はい。そうですね」
親友のことを良い子だと言ってもらえて、更紗はなんだか嬉しくなった。
「ねえ、更紗」
「なんですか」
「恵さんが、さっきおっしゃった言葉の意味って、なにかしら」
「えっ……」
デートだ。ゼッタイ、デートって言われたのを気にしているんだ。ああもぅ、めぐのばかぁ。
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