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「綾姉様。次は学食に行きましょう」
黒衣の女性と小柄な少女は仲良く連れ立って、学食へと足を運んだ。
学生食堂。昼食時は男女の区別なく賑わうこの場所が、放課後は女生徒の花園と化す。
誰が決めたのか、放課後の学食は男子禁制。部活動を行わない女生徒達のおしゃべりの場となるのが、この学校の伝統になっていた。
男子の目が入らないこの空間は、さながら女子高のごとく、あちこちで黄色いおしゃべりが花開いていた。
円形のテーブルに綾音を残し、更紗は自動販売機の列に並んだ。
(綾姉様ぁ……)
並んで待ちながら、綾音のことを遠くからうっとりと眺めた。
女生徒の囀りの中で、綾音の美しく品のある姿は際立っていた。まるで、雀の中で羽を休める白鶴のように。制服の黒なんてまったく気にならないくらい、綾音はそのイメージにぴったりとあっていた。
他の女生徒も考えていることは一緒らしく、こんな会話が聞こえてきた。
「ね、あの人すごいきれい。制服違うし、よその学校の人かな?」
「ううん、今日から学校にきてる転校生だって。まだ制服がないらしいよ」
「あ、知ってる。なんか、古風っていうか、すごいかっこいい人なんだよね」
「そうそう。話し言葉なんてマジでカンドーするよ。ミヤビってカンジっつーかさ」
「だったらほら、話しかけてきなよ」
「えー、ムリムリ。なんかアタシたちなんかとは全然オーラ違うし」
「だよねー」
(えへへ、わたしのお姉様なんだから)
更紗は得意げな顔を浮かべて、小さく笑った。
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