二 おーい、そこのおねえさーん

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「綾姉様。次は学食に行きましょう」  黒衣の女性と小柄な少女は仲良く連れ立って、学食へと足を運んだ。  学生食堂。昼食時は男女の区別なく賑わうこの場所が、放課後は女生徒の花園と化す。  誰が決めたのか、放課後の学食は男子禁制。部活動を行わない女生徒達のおしゃべりの場となるのが、この学校の伝統になっていた。  男子の目が入らないこの空間は、さながら女子高のごとく、あちこちで黄色いおしゃべりが花開いていた。  円形のテーブルに綾音を残し、更紗は自動販売機の列に並んだ。 (綾姉様ぁ……)  並んで待ちながら、綾音のことを遠くからうっとりと眺めた。  女生徒の囀りの中で、綾音の美しく品のある姿は際立っていた。まるで、雀の中で羽を休める白鶴のように。制服の黒なんてまったく気にならないくらい、綾音はそのイメージにぴったりとあっていた。  他の女生徒も考えていることは一緒らしく、こんな会話が聞こえてきた。 「ね、あの人すごいきれい。制服違うし、よその学校の人かな?」 「ううん、今日から学校にきてる転校生だって。まだ制服がないらしいよ」 「あ、知ってる。なんか、古風っていうか、すごいかっこいい人なんだよね」 「そうそう。話し言葉なんてマジでカンドーするよ。ミヤビってカンジっつーかさ」 「だったらほら、話しかけてきなよ」 「えー、ムリムリ。なんかアタシたちなんかとは全然オーラ違うし」 「だよねー」 (えへへ、わたしのお姉様なんだから)  更紗は得意げな顔を浮かべて、小さく笑った。  
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