二 おーい、そこのおねえさーん

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「そう。ふふ、ありがとう、更紗」 「……はぃ」  綾音に名前を呼ばれる度、更紗の心がトクンと跳ねる。なんだかくすぐったくて、ついつい笑みをこぼしてしまう。 「ねえ、更紗」 「は、はいっ」  うっとりとしていたところを急に呼ばれて、更紗は慌てふためいた。 「あら、そんなに固くならないで」  綾音は軽く微笑んで、続けた。 「あなた、前世のこと、何か知ってる?」 「前世? 占いとかですか」  なんでそんなことを聞くのだろうと、更紗は不思議そうな顔をした。 「いえ、もう結構よ。忘れて」  綾音はその反応で充分とばかりに話を切ると、長い睫毛を伏せて黙り込んでしまった。  更紗は綾音の様子を見て、怒らせてしまったのかと思い、必死で他の話題を探した。  そこで、綾音が昼に、いちごジャムとマーガリンがたっぷりとサンドされたコッペパンを食べていたことを思いだし、聞いてみた。 「あのっ、綾姉様は甘いもの、お好きなんですか?」 「え? そうね、大好きよ」  大好きよ。  更紗の頭の中で、その言葉が何度も何度も繰り返された。 「……らさ、更紗。ちょっとあなた、大丈夫?」  更紗は綾音の呼びかけで我に帰ると、ある重要なことが頭に浮かんだ。と同時に、反射的に口を動かしていた。     
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