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「あ、の。金曜日っ。ここは金曜日の放課後だけ甘いものが食べられて安いんです! だからぜひ、わたしとスイーツをっ!」
綾音はしばし、更紗の勢いに押されて呆然としていたが、しばらくすると、目を細めてくすりと微笑った。
「落ち着きなさい。何を言っているのか、わからないわ」
紙パックの水滴で湿った手をハンカチで拭いながら、綾音は微笑んだ。
「突然笑ったり、興奮したり、おかしな子ね。待っててあげるから、落ち着いて話してごらん」
「……あ」
(またやっちゃった。どうしよう、絶対ヘンな子だって思われてる……。なんでわたしったら、綾姉様の前ではおかしくなっちゃうんだろう――)
更紗は、心の温度が一気に冷めていくのを感じた。
「その、ゴメンなさい……」
その額を、綾音がこづく。
「今度は落ち込んでしまうの? 忙しい子ね、本当に。私はあなたと楽しくお話したいのよ。さあ、顔をあげなさい、ね」
「綾姉様……」
更紗と目があうと、またにっこりと微笑んだ。
「ほら、話してごらん」
更紗は深く息をはいて心を落ち着かせると、自分のお茶にぷつりとストローを刺して、一口吸った。
「あの、週に一度、金曜日だけ。放課後にこの学食でデザートが食べられるんです。だから……その……。今度、一緒にどうですか」
「ええ、いいわよ」
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