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「お二人は、いつもこちらで召し上がっているの?」
「はい、そうです。あたし、お弁当が大きいから、男子の目が気になっちゃって……」
「まぁ。ふふ、恵さんらしいわ」
「綾音せんぱいっ。それって、あたしが食いしん坊だって意味ですか!」
すぐにお腹が空くのを気にしている恵は、ぷんすかと怒ってみせた。
「いいえ、別の意味よ。男の子(おのこ)の視線が気になるなんて、恵さん、可愛らしいのね」
「可愛らしいなんて。なんか、困っちゃうな」
「ふふ」
綾音と恵が楽しそうに話しているのを見て、更紗は羨ましく思った。
(わたしも、めぐみたいに素直に話せれば、こうやって綾姉様と普通に話ができるのかな)
更紗は自分が嫌になった。綾音と話をしていると変に緊張してしまい、うまく話すことができないから。
俯き、ミニトマトを箸で転がす。
「更紗、どうかして? お加減がよろしくないの?」
突然、綾音に顔を覗き込まれ、更紗はびくっとなった。
「へ? あ、あの、その……。いいえ、元気です!」
「そう」
それっきり、綾音は恵とのおしゃべりに興じてしまった。
(あーあ。なんか、サイアク……)
恵とコッペパンの話で盛りあがっている綾音をちらちらと見ながら、更紗はミニトマトを箸でぷすっと刺して口に運んだ。
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